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2018年11月更新

パス学習コーナー

1.BOMの現状と今後

第3回:BOMに関するよくある質問

「BOMを導入するメリットは?」「BOMを導入したけれど、どのように使いこなしたらいいの?」など医療機関の皆様がお持ちのBOMに関する鋭い質問、素朴な疑問について、有識者の先生方がお答えいたします。

BOMはクリニカルパス学会が作成したアウトカムのマスターですが、今後、日本の標準規格になり、将来的に電子カルテには標準搭載されるのでしょうか?

副島先生

BOM(読み:ビーオーエム)とは Basic Outcome Master®の略で、クリニカルパス学会が監修し、アウトカム用語を標準化して作成されたマスターです。
2009年10月にマスターの整備を開始し、最新版であるVersion2.2では、既に国内における標準規格であるMEDIS-DCの看護実践用語標準マスターVer.2.8とのひも付けを追加しました。
BOMは、現時点では日本クリニカルパス学会の標準規格ですが、徐々に普及しつつあります。まだまだ臨床現場の記録に対する認識や電子カルテ開発ベンダーの対応力に課題はありますが、現在、記録から臨床データを抽出してくる場合の標準言語規格は他にはないので、事実上唯一のマスターといえます。
今後、BOMが活用できる環境を整える意味でも、国の認証をいただけるように働きかけているところです。

回答者:日本クリニカルパス学会理事長
    副島 秀久 先生(支部熊本県済生会 支部長)

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クリニカルパスの件数が少ない個人病院で使用する場合にも、BOMを導入するメリットがありますか?

町田先生

BOM導入のメリットは多岐に渡ります。
まず第一にBOMを導入することで、アウトカムと観察項目の用語の標準化がなされます。標準化には様々なメリットがありますが、その一つとして、職種間の認識のばらつきをなくし、チーム医療を促進することがあげられます。チーム医療の活性化には医師だけでなくメディカルスタッフの協力は欠かせません。そのためBOMの導入には言語の標準化を通じたチームの活性化という効果があります。
次に、BOMは、 看護実践用語標準マスターとのひも付けがされています。このため、BOMの導入には、パスの記録と看護記録を統合したデータとして活用することができるというメリットもあります。これらのデータは、パスの分析や改訂に活用できるのはもちろんのこと、経営的視点から見れば、限りある医療資源の中で、「何を選択し、何に集中するべきであるのか」という経営判断の材料としても活用できます。そのため、経営面からも効果が期待できるものと考えられます。

回答者:日本クリニカルパス学会理事 標準化委員会委員長
    町田 二郎 先生(済生会熊本病院 副院長)

BOM導入のメリットに関しては、以下の取材事例もご参照ください。

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BOMに付属しているBOM Path Supportは、どういったものでしょうか?

中熊さん

BOM Path Supportは、BOM仕様のパスの作成を支援するソフトです。
FileMaker®のランタイム版で構築しております。最新のBOMを実装しており、自院の電子カルテにBOMを設定いただく前のテストとして、また、新規パスの作成やパスの改訂などにも使用いただけるソフトです。参考までに12種類のパスをサンプルとして実装しております。
BOMの導入時だけでなく、新規パス作成、改訂などの際にも是非、ご活用ください。

※ ファイルやデータを作る機能をなくし、操作機能のみとした再生専用ソフトで、FileMaker®を持たない方でも使用できるようにしたソフトです。

回答者:日本クリニカルパス学会 標準化委員会委員
    中熊 英貴 氏(済生会熊本病院TQM部 特命係長)

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BOMには疾患毎の標準パスも登載されているのでしょうか? NEW

町田先生

現状では登載されておりません。
BOMにより、アウトカムと観察項目の用語の標準化に関しては、一定の整備がなされたと考えています。しかしながら、疾患毎の標準パスの作成には、更にその診療行為に関する標準化が欠かせません。各臨床系学会で様々な治療ガイドラインが作製されていますが、各医療機関で行われる診療行為には、まだまだばらつきがあるのが現状です。今後、BOMを活用した多施設間のベンチマークが進めば、自ずと疾患毎の標準パスも整備されていくものと思われます。
BOMに付属しているBOM Path Supportには、済生会熊本病院で実際に使用されている12種類のパスをサンプルとして登載しています。学会承認の標準パスではございませんが、参考として頂ければ幸いです。

回答者:日本クリニカルパス学会理事 標準化委員会委員長
    町田 二郎 先生(済生会熊本病院 副院長)

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BOMにはアウトカムの種類が充実している疾患領域とそうでない領域があるのでしょうか? NEW

町田先生

診療科によってパスの導入率、活用状況が異なるため、一概にどの診療科のアウトカムが多い、どの診療科のアウトカムが少ないといえるものではありませんが、一部の診療科、疾患領域においては「他の領域と比較してアウトカムが少ないのでは?」、「アウトカムを追加して欲しい」との質問や要望もいただいています。
診療科によるばらつきの一つの理由として、アウトカムと観察項目の粒度の違いが関係しています。
BOMは項目の粒度(概念の大きさ)に応じて、アウトカムと観察項目の2段階で構造化されたマスターです。アウトカムはより大きな概念として患者状態を表す基本用語とするため、原則、“時間”、“場所”、“部位”、“病名”、“薬剤”、“検査”等の個別的な要素を取り除き、様々な疾患に共通するマスターとして集約しています(例1参照)。一方、アウトカムの下位に属する条件や基準である観察項目は、疾患や患者状態により様々であるため、より細かな設定としています。そのため、一部の疾患領域ではBOMのアウトカム表現ではしっくりこず、アウトカムが少ないと感じられることもあると思われます。実際に学会が年に一度行っているOthersの収集事業においても、BOMでは観察項目として設定されている項目が、アウトカムとして収集されている例も少なくありません。もちろん、BOMでは表現できないこともありますので、その際にはOthersをご使用いただければと思います。以下にOthersの収集事業で得られたアウトカムの内、BOMでは観察項目に設定されていた項目について例を提示させて頂きますので、ご参考としていただければと思います(例2)。

(例1.時間、部位、検査を取り除いた例)

  概念を取り除く前の
アウトカム
BOMのアウトカム BOMの観察項目
時間 入院前のADLが
維持されている
ADLの低下がない
部位 注射部位の腫脹がない カテーテル管理に
問題がない
注射部位の疼痛・腫脹・
かゆみ・紅斑がない
検査 血小板数が維持できている 出血傾向の症状・所見がない 血小板数
(〇〜〇/μL)

(例2.自院のアウトカムがBOMでは観察項目として設定されていた例)

自院のアウトカム BOMのアウトカム BOMの観察項目
急激な血圧低下がない 循環動態が安定している 急激な血圧の変動がない
嚥下痛がない 合併症の症状・所見がない 咽頭痛がない/嚥下困難がない

回答者:日本クリニカルパス学会理事 標準化委員会委員長
    町田 二郎 先生(済生会熊本病院 副院長)

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BOM導入にあたり具体的な作業の流れがイメージできません。導入時にどのような作業が必要になるのか教えていただけませんでしょうか? NEW

中熊さん

まず、BOM導入時に必要な作業は、現在ご使用のアウトカム、観察項目とBOMのアウトカム、観察項目との紐付け作業となります。その後の作業は、導入時の施設状況によって異なりますが、代表的なものとして、以下の3つのパターンがあげられます。

パターン①:既に電子カルテ・電子パスを活用しており、新規にBOMを導入する。
パターン②:電子カルテベンダー変更に伴い、BOMも導入する。
パターン③:電子カルテを新規導入するにあたり、BOMも導入する(紙パスから電子パスへ移行する)

①の場合は、既に使用している電子パスのアウトカム、観察項目を前段で行った紐づけ結果に基づき、BOMのアウトカム、観察項目に置き換える作業が必要となります。また、②、③の場合には、現在使用中の電子パス、紙パスを新規の電子カルテに登録する作業も必要となります。
ご注意いただきたいのは、BOMを導入すれば、すぐに電子パスが使えるということではありません。BOMはソフトではなく、あくまでもアウトカムのマスターです。パスの登録作業は別途行っていただく必要があります。


回答者:日本クリニカルパス学会 標準化委員会委員
    中熊 英貴 氏(済生会熊本病院TQM部 特命係長)


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マスターにない用語を使っている場合は、どうしたらよいですか?

中熊さん

BOMでは表現できないものや、新規技術などで新たなアウトカムが必要な場合は、しばらく「Others」に格納する運用をお願いします。
日本クリニカルパス学会では、年に1回「Others」に関する情報収集を行っております。いただいた情報は、日本クリニカルパス学会の標準化委員会において審議の上、追加の作業を行っております。
是非、ご協力の程、宜しくお願い致します。(情報提供いただきました全ての用語をBOMに追加するわけではございません。)
なお、Othersは、各施設の実態に沿う形で運用をお願いしています。
参考までに当院の運用を示します。

大分類:その他
中分類:なし
アウトカムコード:O99991から採番


回答者:日本クリニカルパス学会 標準化委員会委員
    中熊 英貴 氏(済生会熊本病院TQM部 特命係長)

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電子カルテベンダーが変わった場合には、再設定が必要なのでしょうか?(パスのコピーやデータ移行などは出来るのでしょうか?) NEW

副島先生

再設定が必要です。
日本において電子カルテは、その名の通り紙カルテを電子化することから始まりました。当時は現在のようにIoTやビッグデータ等といった言葉もなく、電子カルテは各社各様に開発されてきました。同様に電子パスも各社で仕様が異なるまま現在に至っています。その結果、今でも電子パスの標準化はなされていないのが現状です。ご質問の電子カルテベンダー変更時の対応は、BOMそのものに依存するというより、電子カルテの仕組みに依存するものです。つまり、電子カルテが標準化されない限り、解決が困難な課題とも言えます。
これらの課題解決に向けて、2015年6月に日本クリニカルパス学会と日本医療情報学会では電子パスの標準化に向けた合同委員会を立ち上げました。2018年11月現在、関係団体および各電子カルテベンダーと標準化に向けた意見交換を進め、時系列データの定義を含めたデータモデル※1とリポジトリ※2の詳細設計を行っている段階です。(図1参照)さらに、入出力の標準化やリポジトリと電子カルテのインターフェース開発などが必要ですが、データモデルが構築されれば、電子カルテの標準化の大きな一歩が踏み出されると思います。標準化が進めばデータの互換性や継続性が確保され、ベンダー移行時の苦労は軽減され施設をまたいだデータの交換やパスの移植、ベンチマークがやりやすくなります。現状よりもパスも使いやすくなりデータもとれるので、入力やバリアンス分析などの苦労も解消されると期待しております。

※1 データモデル:データの構造つまり「何のデータをどんな形で、どのように並べていれるか」を整理したものです。

※2 リポジトリ:データモデルに沿って作られたデータを系統立てて保存する入れ物です。


たとえて言うと・・・
格子状のチョコレート箱がリポジトリで、中に入れるチョコレートの形や並べ方を示すものがデータモデルです。

データモデルとリポジトリの関係

図1 データモデルとリポジトリの関係(例)

回答者:日本クリニカルパス学会理事長
    副島 秀久 先生(支部熊本県済生会 支部長)


KK-18-11-23941

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