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てんかん診療Q&A

てんかん診療Q&A 執筆・監修:松浦雅人先生 東京医科歯科大学 名誉教授/田崎病院 副院長 てんかん診療Q&Aトップへ

Q&A

診 断

心因性非てんかん発作の鑑別と治療は?

日本てんかん学会のガイドライン1)では、心因性非てんかん発作(psychogenic non-epileptic seizure, PNES)の診断は傍証の積み重ねであり、除外診断に基づくとしている。そして、発作症状の観察と病歴聴取、複数回のビデオ脳波同時記録、カウンセリングや抗てんかん薬減量といった治療的介入が有効、のいずれも満たす場合にdefinite PNES、一部をみたす場合にprobable PNESとすることを提案している。

治療としては、以下の3点を勧告している。すなわち、1)てんかんが併存する場合には真の発作とPNESを区別させる。2)知的障害のないPNESの場合は、精神療法と薬物減量を行うが、一時的に悪化することがある。3)知的障害のあるPNESでは、環境整備が基本となる。入院治療を行う場合は、疾病利得や退行を防ぐ枠組み設定を行い、原則として期間は1か月程度にする。

真のてんかん発作とPNESとの鑑別を表1にまとめた2)。発作症状の観察・聴取により、(1)発作の経過、(2)運動症状、(3)感覚および自律神経症状、(4)発作時の感情表出と言語表出、(5)表情や外傷、(6)発作後の特徴を総合して判断する。

表1.てんかん発作と心因性非てんかん発作(PNES)との鑑別2)

  てんかん発作 心因性非てんかん発作
(1)発作の経過
常同性 発作の経過は毎回同じ 発作のたびに経過が異なる
睡眠中の発作 睡眠から生じる 覚醒後に生じる
偽睡眠 ない 前駆する
(一旦覚醒してから発作が生じる)
発作中に症状の強度が変動する ない ある
発作の持続時間 短い 長い(全身けいれん様発作が2分以上続く)
(2)運動症状
躯幹を跳ね上げる ない ある
左右四肢の非協調運動 ない ある
断続的な運動 ない ある
下腹部を突き出す動き 前頭葉てんかんである ある
長い持続の全身性弛緩 ない ある
(3)感覚および自律神経症状
瞳孔反応が正常 ない ある(発作中に対光反射・角膜反射が存在する、散瞳は起こりうる)
発作前から発作時にかけて心拍増加 ある ない
(4)発作時の感情表出と言語表出
うめき声や泣く ない ある
情動的な発語 ない ある
ささやく ない ある
(5)表情や外傷
強直期に閉眼している ない ある
強直期に口を固く閉じている ない ある
舌の側面や口腔内粘膜を噛む ある ない(舌先や口唇を噛む)
(6)発作後
いびきをかく ある ない
鼻をこする ある ない
頭痛がする ある ない
発作時の記憶 ない ある

PNESは環境変化、情動葛藤、暗示、人前などの誘発因子が前駆することが多い。発作は緩徐に始まり、緩徐に終わり、発作の経過中に意識晴明と思われる反応がみられたりする。発作中ずっと閉眼していたり、眼瞼に速い振戦がみられたりする。強制開眼を試みるとこれに抵抗し、強制開眼させると眼球は上方に転位している。頭部を回転させても眼球位置が固定したままである。発作中ずっと口を硬く結んでいたり、強制開口に抵抗する。神経学的検査に抵抗する。痛み刺激への反応はないことがある。打ち身や切り傷は起こりうる。失禁ではなく、意図的な放尿はある。全身けいれん様の発作であるのにチアノーゼを伴わなかったり、発作後にもうろう状態がなかったりする。

ルーチン脳波検査の有用性はなく、発作症状と発作時脳波を同時に観察できるビデオ脳波同時記録が有用である。診断のためにPNESを誘発する場合は、治療的配慮から患者や家族に嘘をつかないというスタンスで行う。発作後30分以内の採血でステロイドやプロラクチンの上昇がない、全身けいれん様重積で動脈血ガス分析に変化がないなども、PNESの特徴である。

文献

  1. 兼本浩祐ほか:心因性非てんかん発作(いわゆる偽発作)に関する診断・治療ガイドライン.てんかん研究 26: 478-82, 2009.
  2. Devinsky et al: Differentiating between nonepileptic and epileptic seizures. Nat Rev Neurol 7: 210-20, 2011.
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