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てんかん診療Q&A

てんかん診療Q&A 執筆・監修:松浦雅人先生 東京医科歯科大学 名誉教授/田崎病院 副院長 てんかん診療Q&Aトップへ

Q&A

検 査

Q 欠神発作時の3Hz棘徐波複合 
Q 発作時脳波パタンと誤りやすい波形
Q 抗てんかん薬血中濃度モニタリングの臨床的意義
Q てんかん診断における脳波検査の意義とは?

てんかん診断における脳波検査の意義とは?

てんかんの診断は臨床症状に基づいて行われ、脳波検査は補助診断にすぎない。病歴からてんかんが疑われる場合に、脳波検査で発作間欠期にてんかん性異常波がみられ、その所見が臨床症状と相関する場合にはてんかんと診断できる。しかし、病歴が非てんかん性疾患を示唆する場合に、脳波上にてんかん性異常波が出現すると誤診に結びつきやすい。発作時の脳波記録が得られれば、てんかん診断上の感度と特異度は格段に高くなる。

てんかん性異常波とは、皮質のてんかん焦点から生じたてんかん性発作発射が頭皮上に伝播した棘波や鋭波をいう1)表1図1)。頭皮上脳波にてんかん性棘波や鋭波が現れるためには、皮質の6〜10cm2以上の領域がてんかん性放電に巻き込まれる必要があるため2)、頭蓋底や大脳半球間領域などの埋没焦点では頭皮上脳波にてんかん性異常波が出現しない。

図1.てんかん性棘波と非てんかん性の尖った波形

てんかん性棘波
非てんかん性波形

表1.てんかん性異常波の特徴1)

棘波・鋭波の定義
  1. 背景活動から明らかに区別される突発波
  2. 数ミリ秒で立ち上がる急激な極性の変化
  3. 棘波は20-70ms、鋭波は70-200ms
  4. 複数の電極にまたがった電位勾配を示す
  5. 典型的には陰性への変動
  6. 棘波には徐波を伴うことが多い
棘波・鋭波の出現に影響する要因
  1. 出現頻度は小児で高い
  2. てんかんの若年発症例で出現頻度が高い
  3. 出現頻度はてんかん症候群に依存する
  4. 成人では非側頭葉てんかんよりも、側頭葉てんかんで出現頻度が高い
  5. 睡眠時に出現頻度が高い
  6. 蝶形骨誘導などの特殊電極を用いると出現頻度が高くなる
  7. 発作頻度が多いと出現頻度も高くなる
  8. 発作直後に出現頻度が高くなる
  9. 抗てんかん薬の一部は出現頻度を減じる(バルプロ酸ナトリウムやエトスクシミドは3Hz棘徐波複合を減らす)

若年者と特発性てんかんは発作間欠期にてんかん性異常波の出現率が高い。したがって、睡眠賦活を含む脳波所見が正常であれば否定できる小児てんかん症候群がある。中心側頭部に棘波をもつ小児良性てんかん(いわゆるローランドてんかん)、Lennox-Gastaut症候群、Landau-Kleffner症候群、若年ミオクロニーてんかん、小児および若年欠神てんかん、純粋光過敏性てんかんなどである3)

成人てんかんの場合には、過呼吸賦活や間欠的閃光刺激を含む初回脳波検査で、棘波・鋭波の検出率は約50%にすぎず、長時間睡眠時記録を含む繰り返し検査を行ってはじめて90%程度の例で棘波・鋭波を検出できる。高齢初発てんかんの場合にはてんかん性異常波の検出感度はさらに低い。発作後には脳波上のてんかん性異常波が出現しやすくなるため、発作後の早い時期に脳波検査を行うと、棘波の検出精度を上げることができる。発作後の経過日数が長くなってしまった場合には、検査前日に断眠を負荷して脳波検査を行うと良い。断眠後の脳波検査では自然睡眠が得られやすくなるが、たとえ眠らなくても棘波・鋭波の検出率が増える。

棘波・鋭波にはてんかん発作との結びつきが強いものと、弱いもの、さらにはてんかん発作と関連しないものがある(表2)1)。健常な新生児では脳波に棘波・鋭波が出現するが、このような生理的な棘波・鋭波は6〜8週で消失する。健常人であっても、中心側頭部棘波、全般性棘徐波、光突発反応といった特発性てんかんにみられる棘波・棘徐波が出現することがある。健常小児では2〜3%にみられるが、経過を追うと15%程度はてんかんを発症する。健常な若年成人では、このようなてんかん性異常波がみられるのはわずか0.5%にすぎない2)

表2.棘波・鋭波とてんかん発作との関連1)

てんかん発作との関連 棘波・鋭波の波形
強い(80%以上) 側頭部棘波
頭頂部棘波
ヒプスアリスミア
鋭徐波複合
全般性突発性速波律動
中等度(50〜70%) 前頭部棘波
広汎性棘徐波複合
中心部棘波
後頭部棘波
光突発反応
弱い(40%以下) ローランド棘波
ない(ほぼ0%) 14&6Hz陽性棘波
6Hz棘徐波複合

文献

  1. Pillai J et al: Interictal EEG and the diagnosis of epilepsy. Epilepsia 47 (Suppl. 1) 14-22, 2006.
  2. Tao JX et al: Intracranial EEG substrates of scalp EEG interictal spikes. Epilepsia 46: 669-676, 2005.
  3. Fisch BJ: Interictal epileptiform activity. J Clin Neurophysiol 20: 155-62, 2003.
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